OTO-Ohshima Tamashima Observatory-  Index  Search  Changes  Login

OTO - Ohshima Tamashima Observatory- - friction_drive Diff

  • Added parts are displayed like this.
  • Deleted parts are displayed like this.

!望遠鏡の駆動機構としてのフリクションドライブ

 天体望遠鏡を載せる架台の駆動機構に求められる仕様は次の点である。{{br}}
(1)精密な(できれば高速な)位置決め {{br}}
(2)スムーズかつ高精度な恒星時追尾{{br}}
(3)バックラッシがゼロであること{{br}}

(1)は、高分解能の駆動系と高精度の角度検出器(1秒角前後の分解能を持ったアブソリュートエンコーダ)というハードウェアに加えて、大気差や望遠鏡解析によるたわみなどの補正機能をもった制御ソフトウェアの組み合わせで実現できる。

(2)は、赤道儀式望遠鏡でもガイド時にレスポンスが良く、制御が容易になる。{{br}}
(3)は、経緯台式望遠鏡では、高度軸・方位軸共に本質的に要求される性能である。子午線通過前後の高度軸、緯度に等しい高度での東方(西方)最大離角前後の水平軸は共に、速度ゼロを挟んだ正負のノンバックラッシ精密駆動が要求される。1mを越える経緯台式望遠鏡では、すばる望遠鏡のようなダイレクト駆動方式以外では、ほとんど共通してフリクションドライブが使われている。国内の経緯台で両軸にウォーム・ホイル駆動を用いた物は、この点でまず失敗している。失敗例:駿台学園北軽井沢天文台75cm望遠鏡、防衛大学1m経緯台望遠鏡。ウォーム・ホイル駆動では、本質的にバックラッシが必要なために、ゼロ速度時の微妙な制御が利かなかったためである。

(4)任意の高速移動天体の追尾{{br}}
これについては、国際宇宙ステーションなどの人工衛星や地球接近天体(地球に衝突する可能性のある小天体)の観測に使われ、やや特殊な用途であるが、できればどんな望遠鏡でも、この様な用途にも使えればそれに越したことはない。{{br}}
日本国内で見られる小型天体望遠鏡の架台の多くは、ウォーム・ホイル駆動が使われているが、バックラッシをなくすことができないために、制御性能がでない。バックラッシを減らすために複リード・ウォームといったメカもあるが、完全にバックラッシをなくすことはできない。{{br}}

フリクションドライブは完全にバックラッシゼロを実現し、かつ滑らかな回転を保証する機構である。
ただし、オープンループ制御では、もし負荷変動がある場合には精密な一定速度を保つのは少し難しい。
{{br}}

!!フリクションドライブはすべらないか

日本では、望遠鏡の赤道儀と言えばウォーム・ホイール駆動と相場が決まっていて、それに慣れた目からは、フリクションドライブは見た目に滑りそうで不安だという心配が出てくる。もっともな心配ではあるが、ここは物理法則を信用して欲しい。

外国では歴史的にたくさんのフリクションドライブ望遠鏡の実例があるし、国内でもOTOや美星天文台の赤道儀以外にも口径1m以上の経緯台望遠鏡はすべてフリクションドライブである。

床の上にある物を動かすために力を加えた時に、物が動き始めるまでの間に生じる摩擦力を静止摩擦力、動き始めた後の摩擦力を動摩擦というが、望遠鏡のフリクション駆動で利用するのは、静止摩擦力の方である。

ちなみに静止摩擦力>動摩擦力の関係がある。限界を超え、一旦滑り出すとなかなか止まれないということであるが、その限界を超えない範囲で望遠鏡を駆動すればよい。

望遠鏡に加わる力は、風による風圧を除けば、(1)調整不足から生じるアンバランスによる回転モーメント、(2)ポインティング時に生じる加速度による力の2つしかない。
(1)については基本的に望遠鏡はバランスをとって使うものなので0に近い値であり、(2)の加速度についても、望遠鏡の場合は、全然大したことはない。せいぜい90度を15秒(=時計の秒針の回る速さ=1分間に1回転=1rpm)で動かせば望遠鏡としては最速の部類であり国際宇宙ステーションでも追尾できる速さであるが、加速度としては静止状態から数秒間で1rpmに達すればよいのであるから、機械としては極めてゆっくりとした加速である。

摩擦駆動(フリクションドライブ)の典型的な実用例は、列車の動輪とレールの関係である。自動車のタイヤと路面の関係でもある。そのどちらでもよいから、数秒間かけて1rpmの回転に達する場合を考えれば、十分ゆっくりで滑りそうにないことが想像できるであろう。以下に、これを定量的に検討する。

静止摩擦力Fは、接する面に加わる垂直抗力Nと次式の関係がある。

     F=μ_0*N

μ_0は静止摩擦係数であり、鋼鉄同士の場合0.5程度(表面の状態で大きく変わる)
油膜があると0.1程度になる。しかし、望遠鏡のようにゆっくり回す場合、押付る圧力が大きい場合は油膜を断ち切る作用があるようで、油をたっぷり付けた表面でも実験をしてみると0.1よりずっと大きく、数倍の値になる。実用的には、μ_0は、0.1から0.5の範囲にあると思えばよい。安全を見越して最悪値でも0.1と考えればよい。

すなわち、ディスクにローラーを押し付ける力の1/10の力でディスクを駆動できると考えればよい。

[[http://otobs.org/tech/mounting/friction.gif]]




(未完)

!望遠鏡としての実例
美星天文台101cm赤道議(1993年){{br}}
そのプロトタイプとして実証実験のために製作された20cm赤道議(OTO、1991年){{br}}

参考文献{{br}}
大島修(1995年)「フリクションドライブ赤道議の製作」インタラクティブ・アストロノミ誌(誠文堂新光社) Vol.2,P.129{{br}}
[[p.1|http://otobs.org/photometry/frictionDrive/1.pdf]][[pdfファイル|http://otobs.org/photometry/frictionDrive/frictionDriveEq.pdf]] 
[[p.2|http://otobs.org/photometry/frictionDrive/2.pdf]] ----
[[p.3|http://otobs.org/photometry/frictionDrive/3.pdf]] 
[[p.4|http://otobs.org/photometry/frictionDrive/4.pdf]] 
[[p.5|http://otobs.org/photometry/frictionDrive/5.pdf]] 
[[p.6|http://otobs.org/photometry/frictionDrive/6.pdf]] 
[[OTO-Ohshima Tamashima Observatory-]]トップへ戻る

{{counter}}