フラットフィールド用積分球の製作
2003.12
積分球には、使用する光学系が覗く開口部の直径が、球の直径の1/3以下になるようなサイズの球殻を選び、その内部に鏡面反射の極力少ないつや消しの
白色塗料をムラなく塗装することで実現できる。
製作にあたっては秋田大学の佐伯和人さん達によるWeb
ページが非常に参考になった。
材料リスト
球殻 小中学校理科教材用「小型透明半球」ヤガミ04629 TH-2 \5400
塗料 つや消し白色 アサヒペン クリエイティブカラースプレーマットホワイト
つや消し黒色 アサヒペン クリエイティブカラースプレーマットブラック
光源 白色LED 日亜化学 NSPW500BS
光源ホルダー 調理用こしょう缶、木工用パテ
積分球取り付けホルダー アルミ製灰皿、木工用パテ
今回、直径20cmの球殻(開口部6cm程度以下に相当)を入手するには、理科教材屋さんに頼んで小型透明半球を得た。上記リストの上げたヤガミ製である
が、これは、積分球に転用するには不要な部品が付属していて少し高価である。
事後に気づいたのであるが、ケニスという理科教材屋の扱うものには、不要な部品がなく安価なものがあるので、こちらの方が良かったと思っている(ケニス
「透明半球
1- 141-370 Y(2個組1セット)」\1300)。
塗装
積分球内部には、白色つや消し塗装、外部表面にはつや消し黒+つや消し白の2重塗装とした。
外部塗装は、白+黒+白の3重塗装の方が、内部の反射効果にとってはより良い結果をもたらすかもしれない。
塗装にあたっては、一度に厚く塗装するのではなく、3回以上に分けて、下塗り・中塗り・仕上げ塗り・(場合によっては、さらに駄目押し塗り)をそれぞれ良
く乾燥した後に行った。
作業したのが冬季の低温期だったので、乾燥させるにはヘアードライヤーが役立った。
フランジ・ホルダー
アルミ製灰皿+塩ビ製雨水排水溝落ち葉よけのパーツ+木工用パテ
開口部の周りで積分球を保持する部分が必要であるが、半径10cmの曲率にマッチするホルダに適したものは、大型ホームセンターであらゆる売り場を物色
したが、流用するにしてもなかなか適したものがなかった。最後に目をつけたのが、よく会議室で使われていた薄手のアルミ製灰皿である。これの底を糸鋸でく
り抜き、万力に保持した丸棒に沿わせながら、ハンマーで根気強くたたき塩ビ製フランジ径に合わせた。

照明用光源
これまで、フラットフィールド用照明は、分光特性が穏やかな白熱光源が用いられることが多かった。
その場合、できるだけ短波長の光量を稼ぐためにより高温な光源を使っていた。ハロゲンランプなどが適している。今回小型の白熱球を光源として採用しようと
したが、実際に発熱が大きくて積分球の材料であるスチロールを熱変形させてしまう恐れが多分にあった。
そこで、白色LEDを光源に利用できないか検討した。白色LEDは、青色LEDを1次光源として、LED内部に蛍光物質を照らし、蛍光により連続光を得
て白色光としている。そのス
ペクトルの例は
ここにある。
このスペクトルと今回Hβ、V、Hα、Rのバンドの波長に対応する光強度を調べてみると、特に低照度の波長はなく、まず問題なく利用できそ
うである。実際に手元にあった下記仕様の白色LEDを光源にして、白色拡散板から約50mm離したところに置き、積分球に入れ、CCDカメラでフラット
フィールドとして撮像してみた。
型番:日亜化学製 NSPW500BS
φ5高輝度白色LED<狭指向角>
標準輝度:6400mcd
指向角:20゜
順電圧:3.6V(If=20mA)
最大直流順電流:30mA
本体樹脂色:無色透明
この白色LEDを使ったテスト的カウント数は以下のとおりである。
Filter
|
Count/sec
|
R band
|
76000
|
V band
|
68000
|
H alpha
|
2600
|
H beta
|
1900
|
白色LEDドライブ回路
積分時間は、短すぎるとシャッタームラの影響が出るため、どのフィルター(大きな光量が得られるRやVバンド)でも1秒以上かけたいので、光源はあまり明
るくしたくない。しかしそのままでは、バンド幅の狭いHαHβでは、長時間露出になるために光量を稼ぎたいという矛盾した要求がある。
そこで、RとVバンド用には、電流を絞った1個のLEDを点灯し、HαとHβでは、定格に近い電流を流すLEDを4個点灯するような回路を組み、4つの
フィルターで同一の露出時間でほぼ同程度のカウント数になるようにした。

照明ホルダー
調理用のこしょう缶を加工した。球面座には木工用パテを利用した。透明半球の表面ににサランラップを張りその上からOリングをはさんでこ
しょう缶の底を押し付けた。中心に穴をあけてM3ビスで固定した。その隙間に木工用パテを押し込み固化させた。
こしょう缶の底に直径25mmの円形の穴をあけ、5mm厚の白色アクリル板を円形にくり抜き拡散板とした。
こしょう缶の内部はステンレスの反射面のままである。外部はつや消し黒色塗装にした。