晴天・曇天の検出の実験
ペルチエ素子を使った晴天センサーの性能試験


Experiments for clear sky detection with Perutie Device

 自動観測(無人観測)のためには、確実に晴天・曇天・雨天を検出することが必要である。雨天は雨滴センサーなど専用の検 出器があるが、晴天と曇天の判別用には既製品がない。 岡山天体物理観測所ではイメージセンサーを使い、雲の 分布を把握するようにしているが、個人の観測所の場合、もっとコストパフォーマンスのよい物を利用したい。そこで、以下のような検出器が使えるか どうか検討した。

原理:
2枚の放射板の間にペルチエ素子をサンドイッチにし、一面を空に、一面を地面に向ける。そうすると空と地面に対する放射冷却の違いがペルチエ素子両面の温 度差として現れる。これをペルチエ効果の可逆性(ゼーベック効果)を利用して起電圧として検出する。

予備実験として、この検出器を鉛直に立て、片面から水平方向に10cmほど離した場所に手の平を放射板に平行に置いた。すると数秒後にはペルチエ素子は 10mV程度の起電圧を発生した。水平方向に離したので空気の熱対流の影響とは考えられないので、手の平の体温による赤外線を検出したと考えられる。体温 を36℃とするとその赤外線のピーク波長は、ウィーンの変位則によりλ=9.4μmとなる。この予備実験から、この検出器は 10μm程度の赤外線放射をよく検出する能力があると考えられる。雲の温度は0℃前後であるから、同じくピークの波長は10.6μmとなる。
大気の窓は8~14μmにかけて開いているので、適当な 検出器であると言えよう。

材料:
ペルチエ素子(40*40*4.2)1個
  STS社製 T150-40-127(標準品、シールしていない)千石通商か ら購入。
 最大電流4.0A、定温側最大吸熱量38W
放射板(アルミ板3*103*93)2枚
デジタルテスター(分解能 0.1mV)
perutie device and radiation plate
準備:
アルミ製の放射板は、片面(外側になる方)には放射効率を上げるために黒のつや消塗料(アサヒペン、クリエイティブカラースプレー 49マットブラック ツヤ消し)を塗装。
熱伝導を良くするためにシリコングリスを塗布して
ペルチエ素子をはさむ。
放射板の向かい合う面は、未塗装とした(アルミ金属光沢のまま)。
保持する三脚には、断熱のため2本の木の棒(実は割り箸)で接続した。

実験:
三脚に装置を取り付けた(写真1参照)

Experiments for Clear Sky Detection with Perutie Device

Temperature was measured after leaving the detector 10 minutes or more.
Date
Time
(JST)
Temp.
(deg.)
Humidity
(%)
Weather
SetAngle
(deg)
Detected
Voltage
(mv)
Oct.25.2003
21:52
13
69
fine but hazy
90
0.4

22:27
12
70
fine but hazy 0
32.7
Oct.27,2003
20:25
16
68
fine but hazy
lim.mag=2
0
32.9
Oct.30,2003
22:38
12
68
very fine
lim.mag=4to5
0
35.3
Nov. 1,2003
12:55
23
73
sunny
0
-130

12:45
23
73
sunny *to the Sun
-249
Nov.2,2003 10:45
24
73
cloudy
0
-69.5
Nov.2,2003
21:11
18
75
cloudy
0
7.1

21:19
18
75
cloudy 90
0.2

結論:
検出器を水平に向けた場合、
晴天の夜間は、32mV(霞あり)から35mV(測光夜)
曇天の夜間は、 7mV
晴天の昼間は、-130mV
曇天の昼間は、-70mV

晴天では、透明度にはあまり関係なく30mV程度、曇天では10mV以下で、はっきりと区別できる。なお、検出器を地面に垂直に向けるとほぼ0mVにな り、裏表の放射率や起電力の差がほとんどないことがわかる。

この装置で、空の晴れ具合いを十分判別できることがわかった。
空にむら雲が浮かんだ状態や結露する条件下でどのような出力になるのかは、今後の測定で調べる必要がある。

雨天時の検出電圧は未実験であるが、これは別の検出方法(WeatherMonitorIIとか雨滴センサー)があるので、ペルチエ素子にとっては重要な 実験ではない。
rain senser