AIP4WIN Ver.2を使った自動処理の手順


 AIP4WIN
は、書 籍に附属する安価で多機能なCCD画像処理ソフトです。
2007.11.28改訂

 transitなど数時間から1晩の変光を観測する時に、望遠鏡の追尾がずれていっても
同一視野内で指定した3つの星(目的星、比較星、チェック星)を画像上で自動で
追尾して、自動で測光してくれます。
 Ver.2から、比較星は何と32個まで取れるようになりました。
32個まで比較星が取れるということは、アンサンブル測光に対応しているということで
、明るい比較星が同一視野になくても、その代わりに指定した暗めの星全ての比較星の
フラックス総計に対する目的星の等級差を求めてくれ、測光精度の向上が見込めます。

 また、ダーク・フラットなど一次処理をあらかじめ別の手順で行わなくても、
測光と同時に多数枚のダーク・フラット画像から1枚のマスターフレームを
作成して、自動で測光してくれる優れものです。
 ただ、英語版のソフトなので、使用の際に戸惑うこともあります。
 ここでは私が試行錯誤しながら使っている方法を日本語でメモ書きしておきます。


1 まず、準備です。
 Preferences →Set Directoriesを選ぶと出てくる窓で、
 <Files>タブのImageDirectoryでは、天体フレームの置いてあるフォルダを指定します。
 以下同様にDarkframe Directory では、天体フレーム用のダークフレームのあるフォルダを
 Flatframe Directory では、フラットフレームのあるフォルダを
 Flatdark Directory では、フラットフレーム用のダークフレームのあるフォルダを
 指定します。

 最後に[Set dirctories]ボタンを押し、閉じます。

2 メニューのCalibrate→Setup→Standardを選びます。
  Standardはフラットとダークの処理を行うモードで、Basicはダーク・フラ
  ットの処理無しのモードです。
(1)ダークとフラットのマスターフレームをつくります。
  ・<Dark>タブはダーク処理用で、SelectDarkFramesで複数のダークフレームを選び、
   Median Combineを選び、Process Dark Frame ボタンを押して処理します。
   処理が完了したらマスターダークフレームを保存するためにCreateMasterDark
   ボタン(Save as Master Dark ボタン)を押します。
  ・<Flat>タブはフラット補正用で、SelectFlatFlamesで複数のフラットフレームを選び
   NormalizeMedian(ドームフラットを撮った場合はMedian Combineでよいでしょう)
   を選び、さらにSubtractFlatDarkにチェックを入れ、複数のフラット用ダークフレーム
   を選び、Process Flat Frame ボタンを押して処理します。
   処理が完了したらマスターフラットフレームを保存するためにCreate
   MasterFkatボタン(Save as Master Flat ボタン) を押します。
 これで一次処理の準備完了です。
 
(2)せっかく作ったダークとフラットのマスターフレームです。一旦保存されれば、
  次回の処理時には、このマスターフレームをSelectDarkFramesで1枚だけ
  読み込んで使います。 その場合はAverageCombineを選んでおけばよいでしょう.
  1枚だけなので特に意味はありませんけれど。
  この場合は、もちろんCreateMasterDarkボタンはもう使いません。

3 次に実際の天体フレームの処理に入ります。
  メニューのMeasure→Photometry→MultiImage(Multiple Image)を選ぶと
  自動処理のウインドウが出てきます。
(1)<Setup>タブで、Auto-Calibrateにチェックを入れて、SelectFilesで複数の観測フレーム
  を選びます。この操作で上記2.で処理したダークとフラットを使い自動で
  観測フレームを処理してくれます。
  読み込んだら最初の1枚の画像が表示されますが、画像表示に8ビットしか
  使っていないようで、階調表示が変に見えます。最初はビックリする
  と思いますが、測定には影響ないので気にしないでください。むしろ余分な画
  像表示に時間を取られず軽い動作を保証してくれるのでありがたいと思ってい
  ます。

  ・SelectTrackingModeは、Automaticを選びます
  ・"Track C1,offsetV & Cs"を私は選んで使っていますが、他の方が良いかどうか
    未調査です。
  ・Tarck search radiusは、望遠鏡の追尾の状態に合わせて、フレームとフレームの
   間で追尾のズレの程度が何ピクセルかを入力します。最大のズレの値より少し
   大きな値で良いと思います。

(2)次に<Setting>タブを選び、[Radii]でアパーチャの半径を入力します。
   左から星のAperture、Skyの内側半径とSkyの外側半径を入力しします。
   (入力値は前もって最適な値をマカリとかステライメージを使って調べておく。
   「星ナビ」2004年9月号記事参照
  ・IntegrationTimeでは、観測時の露出時間を秒で入力。
  ・Instrument Parametersでは、ZeroPointにはSBIG CCDの場合は100だと思いま
   す。Gain、ReadOutNoiseとDarkCurrentの値はCCDカメラの取説の値を入れれば
   よいでしょう。そしてSaveボタンを押しておきます。

(3)<J.D.>タブでは、TimeZoneにCCD制御に使ったPCの時間設定に合わせて
   UTか、JSTの場合はUT-9hを選びます(UT+9hでは計算がおかしかった)
   ・True-Logは実際の露出時間の中央時刻TrueとFITSヘッダーに記録された
   観測時刻Logとの差を入力します。自分のCCDカメラではどうか、よくわからない
   場合は、とりあえず0のままにします
   ・HeliocentricCorrectionには、  このExcelファイルで求めた日心ユリウス日の補正値を入力します。

(4)<Report>タブでは、Send photometry output to...はFile on Hard Diskを選びます
   そうすると、今からこのソフトが測光してくれた結果をファイルに書き出してくれます。
   ・Photometry output format...は、私はDifferential (w/ Extra Decimals) を選びました。
    これを選ぶと、V-C1が等級差で出力されます。
   ・Column Separetion Characterでは、出力ファイルのデータ区切りに何を使うかを指定します
      後でExcelなどでグラフを書かせたり、移動平均をとったりする処理を行うようになると
    思いますが、そのデータ読み込みの際にどんなフォーマットのテキストファイルにするかです。
    Spaceだとスペース区切りの固定長、CommaだといわゆるCSVファイル、Tabだとタブ区切りの
    テキストファイルになります。自分の好みに合わせるのでよいでしょう。わからなければ、
    Spaceにしておけばよいでしょう。

(5)最後に、もう一度<Setup>タブに戻ります。
   読み込んだ観測フレームが1枚表示されていますから、その上でマウスで順に測光する
   星を選んで行きます。
   その時にSelectStarsのAnalysisにチェックを入れて目的星を左クリックす
   ると、星像の濃度曲線とStarApertureとSkyAnnulusのサイズが縦のラインに
   なったグラフが出てくる。これにより Apertureサイズが適当かどうか一応判断ができます。
   目的星(V)、比較星1(C1)、比較星2(C2=チェック星K)、比較星3
   以下必要に応じて比較星32まで選べます。
   目的星の明るさより比較星の方がずっと暗い場合は、たくさん比較星を選んで、
   アンサンブル測光として、全部まとめて比較星として測光してくれます。

(6)以上の準備が完了したら   [Execute]ボタンを押すと自動で処理が進行します。

(7)しばらくして処理が完了したら、出力されたファイルをExcelなどで読み込み、グラフにしたり
  ご自由に。
   
AIP4WINを使う上での注意事項として、
(1)Ver.1では、一度に選択する観測フレームは200枚程度までの方がよいと思います。
   はっきり調べていませんが360枚を指定したところ動きませんでした。
   Ver.2では、この点はバグフィックスされているようです。
(2)連続観測の途中で、望遠鏡の向きを大きく修正した場合や雲がかかって星の輝
   度が大きく落ちるなどした場合の処理では、ソフトが星を見失ってしまいます。
   そうなるとファイルに出力される値が途中から変になりますので、一度に読み込む
   のは雲がかかるまでの1まとまり毎に指定するようにした方がよいでしょう。



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