1.1.1 実例:ピントを正確に合わせると測光精度は悪化する
 次の2つのグラフは、2004年4月21日に、同一視野(かみのけ座中心部付近)を同一器械で、ピントを合わせた
場合とわざとピントをはずした場合で、それぞれ約30分間に連続85枚のCCD画像を撮像し、AからDの4つの星
を測光したものです。
望遠鏡の追尾レートはわざとずらして、30分間に数ピクセルの間を星像が移動するようにし、測光精度を調べま
した。

使用機材
   1眼レフ用100mm望遠レンズ Canon FD100mmF/2
   冷却CCDカメラ SBIG ST-9XE (KAF-0261Eチップ使用)
          この組み合わせでは、実サイズ20μmの1ピクセルは約40秒角に相当する

   露出時間20秒 絞りF2.8 V-bandフィルター使用
   赤道儀の追尾レートをはずし 30分間で160秒角移動(ピントを合わせた場合)
                           360秒角移動(ピンを外した場合)
測定方法
 すばる画像処理ソフト「マカリ」Ver.1.2を使用。 アパーチャー測光で、「半自動」「重心を探す」を使用。
 測光パレメータは、恒星径5ピクセル、SKY内径10ピクセル、SKY幅2ピクセル、重心検索3ピクセル

なお、この夜は透明度は今ひとつで、決して測光向きの空の条件ではありませんでした。

測光した星ボシ
 星Bを比較星として、星A・C・Dの光度変化を等級差として測定した。
 星Bと比較して、星Aは約0.6等明るく
           星Cはほぼ同じ明るさ
           星Dは約0.8等暗い















まずは、ピントを合わせた場合の光度曲線。縦軸は、星Bと比較した等級差で表してあります。
0.6等に渡る大きな明るさの変動が見られます。変動の標準偏差は0.2等。
この変動の原因は、次の節1.1.3「ピクセルの中心は感度が低い」で検討する ように、星像が
1ピクセルをまたいで移動する時に生じていて、ピクセル内の感度の不均一性を示している。

ピントを合わせて撮像した場合の光度曲線

次に、ピントをはずした場合の光度曲線。変動の標準偏差は0.036等。
空の条件が良ければもっと均一な光度曲線が得られると思われる。

ピントをはずした場合の光度曲線


参考までに、ピントを合わせた場合と外した場合での星像の違いを示します(星Cの場合)。
ピントを合わせた場合の星像
(左図)
ピントを合わせた場合
ほぼ1ピクセルに光が集中
している。

(下図)ピントを外した場合
半径5ピクセル程度に光は
広がっている。
最も明るいピクセルは星像
の中心ではなくて視野中心
から反対方向にずれている。
それがこのレンズの特性の
ようである。




ピントを外した時の星像

















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