1.2.1  まずは光子統計と測光精度

       −カウント数は1000,000以上を目指そうー
  改訂:トランジット観測でも1ミリ等級オーダーの測光精度を追及した方がよいので 記述を改めました。(2008.1.4)

   測光精度を決める大きな要因として、光子数がある。光子はランダム
な時系列で検出器に入ってくるため、統計的な揺らぎを持つ。この揺らぎ
のために生じるノイズを、ショットノイズという。このような場合は、検出光
子数が多いほど精度を稼ぐことができる。

検出した光子数をN_s(ここではスカイの寄与は差し引いた、星からだけの
正味の検出された光子数)、その揺らぎによるショットノイズをN_nとすると、
 
          N_n = √(N_s)

であるので、S/N比は

           S/N = N_s/√(N_s)
 
ここで、分子分母に共に√(N_s)を掛けると
 
           S/N = N_s√(N_s)/N_s
               = √(N_s)
 
となる。
 従って、S/N比を1000(精度0.1%)を目指したい時は
N_sを1000,000以上にしなければならない
ことがわかる。
 
 実際には、CCDで記録されるカウント数は、AD変換後の値であり、検出され
た光子数(=光電子数)そのものではない。1カウントが光電子何個分に相当
するかをADU(AD変換単位、資料編参照)と呼び、CCDカメラメーカの仕様書
に明記されている(ADUを明記していないようなCCDカメラのメーカは、測光用
途を考えずに製造していると思ってよいだろう)。
  なお、ADUは上に説明した光子の統計的性質を利用して、自分で調べるこ
とができる。4.2      AD変換単位の調べ方参照。

 ST-9の場合を例にとると、ADU=1.6であるので、検出光子数1000,000に対応す
るADUでのカウント数は、1000,000/1.6=625,000カウント以上あればよいことにな
る。しかし、S/N比は良いに越したことはないし、特に日本では天気の関係で余裕が
欲しいので、観測上の目安としては、

            ざっと1000,000カウント以上

を目指せば間違いない。

 検出できる光子数は多いほど良い。ゲーテにならって「もっと光を」である。
従って、一般論として言えることは、使用する望遠鏡の口径は大きいほど良い
(ただし、焦点距離は長いと困ることも多い→後述)。

 
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