1.1.3 ピクセルの中心は感度が低い

   
 次の図は、これまで示した観測データを処理したもので、星Cについて、検出した星像重心の
ピクセル中心からの距離(青色の点)と星Cの検出した明るさの変化を同時に示したものです。
ピンクと黄色・水色の点は、それぞれ、比較星を星Aと星B・星Dとした時の星Cの差等級の平
均値からのずれとして示します。
 青色の点が大きな値をとる(1ピクセル内でピクセル中心から離れた所に星像の重心がある)
時に、検出された明るさは明るい方にずれている(マイナスの値をとる)ことがわかる。逆に星像
の重心が、ピクセル中心に近いときには、検出された明るさは、暗くなっている。逆相関、つまり、
ピクセルの中心で感度が悪くなっていることを示している。
   sensitivity in a pixel


参考までに、検出された星像の重心位置を実際の星像の上にマークしたものを下図に示す。
星像の重心をしめす×マークが見難いが、左図は星像の重心がピクセル中心付近にあるときで、
この時重心位置の座標は、X,Y共に小数点以下の数字が0に近い値を示す。
 下右図は、星像の重心が隣接する下のピクセルに近いところにある時で、重心位置の座標は
X座標の小数点以下が0に近い値を示し、Y座標は0.5に近い値を示している。
 これらのことから、1ピクセルの範囲を示す座標としては、−0.5〜+0.5の数値で表されて
いることがわかる。

星像の重心がピクセル中心に近い場合星像の重心がピクセル中心から外れた場合







なお、星像を囲む紫色のサークルは
星の測光に用いた範囲を示している



ピクセルの中心付近は0.6等も感度が悪い(KAF-0261Eチップの場合)

 このページの最初に示した図をもっと理解しやすく整理したのが下図である。1ピクセル内での星像
の位置と感度の相関関係を端的に示している。(ピントを合わせた場合)
ピントを合わせた時の重心位置と感度









横軸は星像重心のピク
セル中心からの距離
√(儿^2+兀^2)
を示す。

縦軸は比較星との等級
差の平均値からのずれ
を等級で示す。

ピクセルの中心と端で
は、感度の違いは等級
で0.6等を越えている
ことがわかる。





次の図は、ピントを外し、星像を直径5ピクセルに広げた場合の同様な図である。
星像の重心位置と感度の関係は認められないので、ピントを外した場合は安心し
て測光できることがわかる。
ピントを外した時の重心位置と感度の関係


このページに示したようなピクセル内の感度ムラまでわかるとは、実験開始当初は
考えてもいなかった。実験に使ったST-9XEのKAF-0261Eチップの1ピクセルのサイ
ズが20μmと大きめであり、それに対して光学系がシャープな星像を持ち、さらに
レンズの焦点距離が100mmと短いために追尾のズレ具合がピクセル間の滑らかな
移動として利用できたために、現象の検出が容易であったと考えられる。


その後、CCD測光による変光星観測のベテランMEI/NEKO さんから
次のようなデータの提供を受けました。
対象:アルゴル
50mmカメラレンズ+ST-9XE ピントを合わせて撮った
追尾のズレでピクセル間を移動するに伴い、大きく変動している様子がわかります。
「うなり」現象もあるようですが、これはピクセル間移動の周期に他に何かの周期が
重なった結果なのでしょう。いずれにしても、このグラフからは、ピクセル内の感度
ムラは1等近いものがあることを示しています。後日、ピントを外して撮像すると
このような大きな変動はなくなったそうです。
MEI/NEKOさんの場合


ピクセル内感度ムラと星像PSFの関係を理解するために、簡単なシミュレーションを 行ってみた。(下図)

  単純な1次元モデルなので、実際の2次元とは様子が異なるはずであるが、大雑把な傾向を見る
には1次元もでるで十分であろうと考えた。
 下右図の青色のV字型が仮定したピクセルの感度ムラであり、上に示した実測した感度ムラにあわせ
てある。それ以外のグラフが仮定した6個のPSF(ほぼ三角形とした)である。
 下左図が、星像を0.1ピクセルづつ移動させて、検出されるカウント数の変化を示したもので、当然の
こととして、シャープなPSFほど大きな感度ムラを示している。
 注目すべきは、FWHMの2.4と2.1のもので、PSFの形はほとんど同じであるが、星像のピークだけが尖っ
ているのと平らなものという違いがある。鋭いピークを持つ星像は、感度ムラの影響を受けやすいことが
わかる。
このシミュレーションからわかる結論:
(1)星像は少なくとも直径5ピクセル以上のサイズまで大きくするとピ クセル内感度ムラの影響を
ほとんど受けなくなる
(2)星像のピークは平らなほど影響は少ない。
ピクセル内感度ムラとPSF シミュレーション
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