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OTO - Ohshima Tamashima Observatory- - Orion社のオートガイダー Diff

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CCD測光のための
!Orion社製StarShootAutoGuiderのテスト

!!系外惑星トランジット観測とオートガイダーの必要性
トランジット系外惑星のCCD測光では、ガイドエラーが影響します

系外惑星HD17156bの測光観測では、トランジットによる減光量は0.007等に過ぎず、0.002等の測光精度(系統的誤差)が問題になりました。こうなると補正するフラットフィールドの出来が結果を左右します。しかし、0.1%もの高精度フラットを得るのは容易ではありません。正攻法ではありませんが、CCD上の目的星と比較星の絶対位置が変化しなければ、結果の等級差の誤差は生じないはずです。
 
!!!ガイドをしない場合の問題点
 私など、同一視野を6時間程度に渡り写し続けるトランジット観測では、CCDカメラが自動で何100枚も撮像してくれるので撮像はCCDsoftとつい望遠鏡の方も自動追尾に任せて寝てしまいます任せ放しにしたくなります。しかし、どうしても極軸のズレや望遠鏡の追尾誤差(レート不正と周期誤差)、さらに気差による浮き上がりなどのためにどうしてもCCD上で星は移動します。
今仮に、フラット補正に問題があり視野の同心円状に外側にいくほど感度が落ちていると仮定しましょう。その感度(フラット補正のむら)の山の両裾に目的星と比較星があるとします。そこで、だんだん追尾がずれていくと、例えば目的星は感度が低い方に、比較星は感度が高い方へずれるとするとその等級差は減光を示すことになります。
 
そこでオートガイダーの登場です。
SBIG社のCCDカメラには自動ガイドチップが付属しているモデルが多いですが、トランジットの測光観測では、ピントをぼかして撮像するので、このオートガイダはほとんど役に立ちません。別のガイド望遠鏡とオートガイダーが必要になります。
今回Orion製のStarShoot AutoGuider(以下、SSAG)を転送サービスを利用して個人輸入しました。

[[http://otobs.org/photometry/images/OrionSSAG.jpg]]

とりあえず、大昔に買っていたスリービーチ製の6cmf/5の屈折望遠鏡に取り付けてガイドのテストをしました。CCD測光用では、それほど高精度のガイドは必要ないので、この程度の簡便な望遠鏡で十分なようです
以下はその簡単な報告です。
(注)このページの記述の目的は、あくまでCCD測光用ですので、
鑑賞写真用のガイドには適さない記述があると思います
[[http://otobs.org/photometry/images/3B&OrionAG.jpg]]

!!機械的接続
SSAG本体は136gと非常に軽いので、取り付けたガイド望遠鏡は、5cmファインダー
用の脚で十分保持できました。
カメラ側はアメリカンサイズのアイピースと同じ径のスリーブが着いていますが、ここでは
それをはずしてTマウント(M42 P=0.75)のネジを利用して接続しました。

!!電気的接続
ST-4コンパチ制御出力(写真では左側のモジュラージャック)をそのまま附属の
モジュラーケーブルでミードの架台の「オートガイダー」端子に挿し、USBケーブルは
パソコンのUSBポートに挿すだけです。電源はUBSケーブルから取ります(いわゆるバス
パワー)ので、じゃまになるACアダプターの類が不要で便利ですが、私のようにリモート
観測しかしない場合は、装置の電源の入り切りはPCのon/offでしかできないので少し不便な
点もあります

!!ガイディングソフト
附属していたソフトは、日本の鑑賞写真を撮る人たちの間で最近人気の「PHD Guiding」というフリーのソフトでした。自動でキャリブレーションしてくれ、簡単です。
なお、このソフトは附属CD-ROMからインストールせずに[[PHD Guidingのサイト|http://www.stark-labs.com/phdguiding.html]] からダウンロードしてインストールした方が新しいバージョンが使えます。


!!!ダークノイズ
オートガイダーの熱雑音が気になる場合には、PHDguidingにはダークノイズを自動で
差し引いてくれる機能があり、「TakeDark」というボタンを押すだけです。
しかし、5月5日現在の気温では、2秒露出ではダークノイズは気にならないので使いませんでした。

!!!視野とガイド星
CMOSセンサーのサイズは1/2インチで5.3mm × 6.8mmあるので、視野は6cm f=300mm
だと40分角が得られ、こと座に近いヘルクレスの星野では視野内に4個程度の8等星が
入り、そのどれでもガイドに使えたので、ガイド望遠鏡を動かしてガイド星を探す必要
はありませんでした。ピクセル数は1280×1024で、SXGAですね。ソフトの画面上の表示は
640×512程度です。
ガイド精度
ガイドしながら3時間ほどTrES-3の視野をST-9で写して見ましたが、ST-9の視野では
5ピクセルほどのズレに収まっています。これならフラットの不完全性があっても、
ガイドエラーによる測光精度悪化は無視できるでしょう。十二分な性能です。
ちなみに、この5ピクセルほどのズレの原因は、はっきりしていて、
(1)シュミットカセグレンの主鏡は固定していないので、望遠鏡の姿勢の変化により傾くこと、
(2)スリービーチの望遠鏡は合焦部がヘリコイドで、グラグラしています。なので、やはり
  望遠鏡の姿勢の変化により、ドローチューブが大いに傾くこと、
の2点でしょう。したがってオリオン製のオートガイダーのせいではないと思います。

!!結論
口径6cmで、2秒露出なら8等級の星を無理なく検出でき、かつ十分精度良くガイドできる性能が
ありました。
かけた経費を考えると非常にお買い得だと思います。

!!経費
米国の小売店へ商品代+米国内送料 $259
米国の転送サービスへ手数料 $13
国際クロネコ宅急便へ3000円ほど
合計3万円程度でした。

!!!ちょっとした疑問
 実は、税金が税金を2重に取られます取られました。米国内の消費税はしかたない(米国内の転送先をオレゴン州に選べば消費税はかかりませんが)として、日本の税関で自宅まで配達してきたヤマト運輸が全体の5%の消費税がかかります消費税を徴収していきました
買い物自体は、米国内で代行店まで米国内の小売店へクレジットで支払ったので転送代行店まで品物が送られた時点で完結しているはずで完結しています。つまりすでにそこですでに品物は私の所有物になっているはずです。物を買うという商行為はここまで終わっている。代行店には物を預ってもらって、日本へ転送してもらっているだけです。というわけで、転送サービスについて言えば、転送代行店に代金を支払っているというわけではありません。代行店は商品の支払いには一切関与していません。

転送サービスは、代行店が単に米国から日本へ荷物を送っているだけです。ですから、国際クロネコ宅急便の送料に対して日本の消費税を掛けるということなら掛けるということならまだ理解できますが、なぜ、支払いはすでに済んでいる商品価格に商品に対して、日本の消費税がかかるのでしょう。

まるで外国に旅行して土産を買って帰ると、空港の税関で外国で支払った土産の代金に対して日本の消費税を掛けられるようなもので、おかしいと感じますが、皆さんいかがでしょうか。

!使って見ました

!!PHD Guiding 1.8.2の画面
[[http://otobs.org/photometry/images/TrES-3_phdguiding_1.8.jpg]]  
コントラストは良くないが、口径6cm f/5の望遠鏡を使い
5秒露出で10等星が見えている。

(1)カメラの選択
左下のカメラアイコンをクリックするとガイドカメラを選ぶ窓が開くので
StarShootAutoGuiderを選ぶ。

(2)望遠鏡との接続方法
左から2番目のアイコンをクリックすると接続方法を選ぶ窓が開くので
SSAGでは、OnBoardを選ぶ

(3)ダーク取得
露出時間を選んでおいて、「TakeDark」ボタンを押すと「望遠鏡に蓋をしろ」
という指示が出て、蓋をした後に「OK」を押すとダークフレームを取得し、
以後は自動でダークを差し引いてくれる。

(4)キャプチャ
このリングのアイコンを押すと、連続撮像が始まる。適当なところで「STOP」ボタン
を押すとキャプチャが止まる。

(5)ガイド星の選択
キャプチャをSTOPさせた画面上の適当な星(明るすぎる星を選んでも選択できない)
を選ぶと、その星を囲む緑色の四角の枠が表示され、その範囲内で星を自動で探し
重心検出するようです。この枠の大きさは、あらかじめ、後で述べる上級設定の
「Search region(pixels)」で設定できます。デフォルトでは20×20ですが、
300mmの焦点距離では15×15にしました。

(6)PHDガイド
このアイコンを押すとガイドを開始する。(一度キャリブレーションを行ったか、
上級設定で「Force calibration」にチェックを入れていない場合)
電源投入後初めてこのアイコンを押す場合(または上級設定で
「Force calibration」にチェックを入れた場合)は、まずキャリブレーションを
実行します。この場合のキャリブレーションとは、オートガイダーが何秒ガイド
修正を行うとガイドセンサー上で星がどの程度動くか、またガイド方向を反転した
場合、どの程度バックラッシがあるかを学習するものです。
下の画像は、キャリブレーション中の動きを、(オートガイダーではない)撮像中の
CCDカメラ画像で捕らえたものです。左側は、W方向に10回ほどキャリブレートしている
ところです。測光用にピンとはわざとはずしてあります。右側はE方向からN方向に切り
替えているところです。なお、上級設定で、赤緯方向のガイドの有無を設定できます。
[[http://otobs.org/photometry/images/brain_phdguiding.GIF]]
キャリブレーションが終了すると自動でガイドモードになります。

(7)上級設定(Advanced setup)
脳アイコンを押すと上級設定を行えます。以下はHelpを訳してみました
(元の文章は私の苦手な口語的表現なので、間違いがあれば遠慮なく教えてください)

このadvanced panelは PHD Guidingの操作を細かく調整するためのものです。

RA Aggressiveness (100%がデフォルト値):  この値は、設定した露出時間の画面ごとにRAの方向へどれだけ動かすかを決める。いつも過修正になるようなら、このパラメータを、例えば10%程度の少しづつ小さくしなさい。いつも負修正気味で、遅れて行くようなら、この値を少しずつ増やしなさい。あくまで少しづつ調整するのが肝心です。

RA Hysteresis (10% がデフォルト値):

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