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AIP4WINを使った自動測光

                        Ver2.3用修正 赤沢秀彦・大島 修 2010.12.27

 AIP4WINは、書籍「The Handbook of Astronomical Image Processing With AIP for Windows Software」Richard Berry & Jim Burnell著 に附属する多機能なCCD画像処理ソフトです。  系外惑星のtransit観測など、短時間の変光を観測する時に、望遠鏡の追尾がずれていっても同一視野内で指定した3つの星(目的星、比較星、チェック星、実は3個以上32個まで比較星が取れる)を画像上で自動で追尾して、自動で測光してくれます。アンサンブル測光にも対応していて、全ての比較星のフラックスの総計に対する目的星の等級差を求める機能もあります。  また、ダーク・フラットなど一次処理をあらかじめ別の手順で行わなくても、測光と同時に多数枚のダーク・フラット画像から1枚のマスターフレームを作成して、自動で測光してくれる優れものです。すべて英語で書かれたソフトなので使用の際に戸惑うこともあります。  ここでは私が試行錯誤しながら使っている方法を日本語で書きます。

前提:
(1)ダークフレームとフラットフィールドは複数枚撮像している
(2)フラットフィールドは、薄明時のスカイフラットで、1枚ごとに明るさのレベルが異なる

1. まず、準備です

 Files →Preference→Set Directories で、Imageのあるドライブ・フォルダーをセットします。 同様にDark frame Flat frame (マスターダークを作る際にはFlat dark)のあるドライブ・フォルダーをセットします。

2. メニューのCalibrate→Setupを選ぶ

  窓が開くのでCalibration ProtocolはStandardを選びます。   Standardは、1次処理としてフラットとダークの処理を行うモードで、   Basicはダークのみの処理 モードです。

(1)ダークとフラットのマスターフレームをつくります。

  ダーク処理用には

SelectDarkFramesで複数のダークフレームを選び、
Median Combineを選び、Process Dark Frame ボタンを押して処理し、
Save as Master Darkボタンを押し保存します。

  フラット補正用には

SelectFlatFlamesで複数のフラットフレームを選び
NormalizeMedianを選び、SubtractFlatDarkにチェックを入れ、フラット用のダークフレーム(複数)を選び、Process Flat Frame ボタンを押して処理し、Save as MasterFkatボタンを押します。
これで一次処理の準備完了です。

(2)マスターフレームが一旦保存されれば、  次回からは、このマスターフレームを1枚だけ読み込んで使います。  上記(1)は省略して、

Select Dark Frame(s) ボタンを押して、使用するmaster Darkを選ぶ。(開く。) Process Dark Frame(s)ボタンを押す。
Flat  に切り替える。
Select Flat Frame(s) ボタンを押して、使用するmaster Flatを選ぶ。(開く。)Process Flat Frame(s)ボタンを押す。
Closeを押す。

3. 次にいよいよ天体フレームの処理に入ります。

  メニューのMeasure→Photometry→MultiImage(Multiple Image)を選ぶと   自動処理のウインドウが出てきます。   この画面では、並んでいるタブの右から順番に確認していくとよい。

(1)Settingsタブ

Radii  測光に使用するアパーチャ半径
     左から「星」と「空の内側」と「空の外側」の半径を
     ピクセル単位で入力します。
     左の値ほど小さい(内側になる)ので、それに矛盾した値を
     入れると、取り得る最大値が自動的に入る。
Instrument Parametersは、CCDカメラ毎に入れる値が異なります。以下は例です。カメラごとにマニュアルを参考にして入力するとよい。
    Zero Point       ST-8も9も共に25を入れる
          (ここは勘違いをしていました、等級のようです。が、ほとんど無意味です)
     Gain[e/a du]    ST-8では2.3、ST-9では 1.6です。
     Integration(sec) これは露光時間のことです。
      R.O.Noise(erms)    ST-8も9も共に15
     Dk Curr[e/s/pix]   ST-8では1.0、ST-9では4

 同じ処理を繰り返す場合は、[save]ボタンを押しておく。)

(2)JDタブ

         Time Zone   UT        Ver2以降では 「UT+9h」を選ぶ
          True Log    0 sec  ←NTPサーバーで0.1秒以下まで観測時刻を
                合わせている場合
         Heliocentric Correction  これは、観測時間帯の中央時刻で計算
     (大島エクセル等で計算し)補正値を秒で入れる。

 もっとも、激変星やExoplanetsのトランジット観測など、1秒以下の時刻精度が要求される場合は、太陽系重心時刻補正が必要になるが、その場合は、後で補正するためには、ここでは率直にHeliocentric Correction=0にしておく方が良いでしょう。

(3)Reportタブ

      Data LogかFileonHardDiskのどちらかを選ぶ
        Differential Photometry
             ※ これをRaw Aperture Photometryにしておくと、
                    V,C1C2・・・のCCD面上の座標が得られる。
       ※ 系外惑星のtrabsit観測では、
         Differential[w/Extra Decimals]がよい
       ※ 高S/N比を狙って比較星のフラックスを稼ぎたい時は
          Ensemble Photometry
         Column Separation Character
       ここは「Tab」を選んでおくと後でExcelで読込む時に扱いやすい

(4)Setupタブ

   Aoto-Calibrationにチェック、
     Analysis にチェックを入れるとアパーチャと星像の関係がよくわかる
     AutomaticかManualのどちらを選ぶかは、望遠鏡のガイド状態と天候が
     共に安定している時以外は、'''Manual''' の方がよい。
    ◎Track  C1  Ofset V & C2 にチェックを入れておく
     Track search radiusの数値をいくらにするかは、上記のアパーチャ追尾
     をManualにした場合は、Skyの半径程度にする。これは、星像の位置を
     検出するのにこの値が関係しているためで、値を大きくし過ぎると、近く
     にある星や雲によるSkyの傾きを拾って、測光アパーチャがうまく星を拾
     ってくれず苦労することがあるからである。
    [Select Files]ボタンを押し、測定する画像を(複数)決める(開く)。
       表示された最初の画像情でV , C1 , C2 ,・・・・・を選ぶ。
    星を選び直す場合は、「ClearStars」ボタンを押してやり直す
   場合によっては   Settings  にもどり、アパーチャサイズを変更してやり直す。この操作は結構重要です。

  

  [Execute]ボタンを押すと処理が開始される。
  manual処理を選んだ場合は1枚ごとに
    [Accept Stars]か、悪天候などで1枚スキップしたいときには
  [Skip Image]を押す。

  処理終了グラフが表示される。   

「AIP Data Log」を表示(テキストファイル)し、「Save to File」でテキストファイルとして保存する。

Q&A

Q:> Zero Point       ST-8も9も共に25を入れる
 > (ここは勘違いをしていました、等級のようです。が、ほとんど無意味です)
 
 の部分で25の意味はなんでしょう?

A: もともと、AIP4Winで25に設定されていたので25を採用しましたが、その 意味は、ボグソンの等級の原点ゼロ点を25等にするということだと理解してい ます。

例えばRcバンドだと、スカイレベルがOAOあたりで1秒角平方あたり 21等だったりしますが、シーイングさえ理想的(=星像が1秒以 下)であれ ば、21等の星は、21等のスカイレベルに上乗せして21 等の信号が乗っているためまだ容易に検出できます(できるはずで す)。その検出限界が 25等くらいになりそうです。

このZero Point は、AIP4WinではRaw Aperture Photometryモードを選ぶと、比 較星を使わずにいきなりこの星は何等という数字を出してくれます が、その時に使われるようです。少なくとも地上か らの観測で は、地球大気の吸収のために星の明るさの絶対値は意味を持ちませ ん、あくまで比較星との比で等級が決まるものですから、正確な測 光で は、この25という数字をゼロ点に使った測定値はあてにし てはいけない、というわけです。 大変おおざっぱな目安として使う分にはよいのでしょうが。

ここでプログラム上でどのように扱っているのか気になるのでソフト作者のBerryさんの元の本を調べてみました(p.275)。 ほぼ上のとおりでした。 ポグソンの等級の定義式はつぎのように、二つの星の明るさの比か ら等級差を求めるものですが

m1-m2=-2.5*log(L1/L2)

ここで、2番目の星を分離して右辺第2項にまとめると

m1=-2.5*log(L1)+{m2+2.5*log(L2)}

この{ }の部分をZero Pointと呼んでいるようです。 つまり、その器械等級the instrumental magnitudeの原点のこと で、全くの任意の数字であるとBerryさんも書いています。

初心者が性急に、ある星の等級だけを、比較星を使わずにいきなり 求めたいと思うことはよくあることですが、そのためにL1のカウン ト数だけから等 級の数字をだせるようにしているのではないで しょうか。


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Last modified:2011/01/06 14:33:21
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