解決策:ピントを外すとよい
どの程度
これまで見てきたように、星像がピクセルサイズに較べて小さい場合は、ピ ントを正確に合わせるほど測光精度も位置精度も悪化することがわかる。
では、この影響を少なくするためには、どうすればよいか。
(1)ピクセルサイズの小さいCCDを選ぶ (2)ピントを外して星像直径を大きくする (3)特殊な場合は、露出中に望遠鏡架台ごと動かして星像を太らせる
などが考えられる。 まず、(1)のピクセルサイズの小さいCCDを選ぶ場合は、1ピクセルあたり の容量(フルウェル)が低下して、ダイナミックレンジが下がり、S/N比も低下 するので、おすすめできない。ただし、オンチップビンニングにより、見かけ上 ダイナミックレンジを増やすことができるので、ピクセル内感度ムラの影響を 抑えるには効果的かもしれない。その場合は(2)の方法をとるべし。 また、最後の(3)の方法は、画面のどこにある星像も同じPSF(ポイントスプ レッドファンクション)を持つので、非常に素性が良いデータを得る方法である が、それを実現する手間が少し大変である。
ここで一番のお勧めは、
(2)ピント外して星像を大きくすること
である。 では、その最適な星像サイズは、どの程度か。
まず、最小の直径は、5ピクセル以上は必要である。(1. 1.3のシミュレーションの結果を参照)
暗めの星の場合は、1ピクセルあたりのカウント数がそのCCDのダイナ ミックレンジの範囲ないであれば、この程度のボカシ量でOK。
しかし、この程度のボカシ量では、少し明るい星の場合は、露出時間を20秒 程度かけるとカウント数が増え過ぎて、直線性が悪化する領域に入ったり完 全に飽和することがある。その場合は、かなりピントをはずし星像を大きくす る必要がある。その程度は、星像の中で一番明るいピクセルのカウント数が そのCCDのダイナミックレンジの上限を超えないカウント数となるようにピント をはずす、これが星像の最大直径を決 める条件である。
次の画像は、筆者の観測時のぼかしの程度の実例である。
なお、数秒程度の短い時間分解能を要する速い現象の観測の場合は、 観測時には1秒から数秒程度の短い露出時間で連続観測を行い(読出しの 速いUSB接続のCCDがお勧め)、整約後のデータに20秒間程度の移動平 均をかけると良いS/N比が得られる。
なお、光学系によっては、ピントを外すと副鏡(斜鏡)の影が星像に反映 して、ドーナツ状の星像になるとか、いびつな星像になるとか、という心配を する向きもあるかと思いますが、その星像を十分カバーするアパーチャを 用いれば測光精度や重心検出には悪影響はありません。
すでにピクセルサイズが小さいCCDをお持ちの方は、 「オンチップ ビンニング」を行い、2×2または3×3のピンニングを行えば、 十分なダイナミックレンジが得られる。直線性が良くないABG付きのCCDカメ ラでも、ビンニングを行うと十分な直線性を持って広いダイナミックレンジを得 ることができる(1. 3章を参照)。
なお、フィルターを交換して多色測光する場合でも、自動で再現性よく操作 できる場合を除いて、1晩の間に一度決めたピントはフィルター毎に合わせ直 ししてはならないし、フラットフィールドを撮影し終わるまでピントを変えてはなら ない。
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