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相対測光における標準システムへの変換

相対測光における標準システムへの変換はどのようにすればよいか

以前に、測光標準星の観測から、次の変換式が得られているとする。

(B-V) = 1.112*(b-v)_0 - 0.246
    V = v_0 - 0.0542*(B-V) - 8.6013

目的の星は、HR3454(B3V)で、これを自分で観測し標準システムでの等級と色指数を求めたいとする。 同一写野内にあるHD74393(A0III) B=6.308 V=6.362(SIMBAD) を比較星として用いた。

 実行例(失敗)

AIP4Winなどの測光ソフトを使って比較星との等級差として

b = -2.161
v = -2.062

が得られたとすると、比較星の等級を考慮してと次の観測等級を得た。

b = 4.147 (=6.308 - 2.161)
v = 4.300 (=6.362 - 2.062)

その色指数は b-v=4.147-4.300=-0.152

これらの値を用い標準システムに変換すると:

(B-V) = 1.112(b-v)_0-0.246=1.112*(-0.152)-0.246=-0.415
V = v_0-0.0542(B-V)-8.6013=4.300-0.0542*(-0.415)-8.6013=-4.279
B = -0.415+(-4.279)=-4.694

BもVも金星並みに明るくなった!!

SIMBADによれば、B=4.100 V=4.300 である。

どこがおかしいのか、どのようにすればよいか?

解決編

まず、どこが間違っているのか?

(b-v)_0として-0.152、v_0として4.300 を使っているところが間違い。

変換式は、あくまで大気外の器械等級と器械色指数を使うための式です。

つまり器械等級v_0は、大気外での-2.5*log(生のカウント数)

器械色指数(b-v)_0は、大気外での-2.5*log(生のBカウント数/生のVカウント数)である。

上記例のように比較測光を行った場合には、得られた等級b,vとは異なるので、そのままでは使えない。

では、上記例のように比較測光を行った場合はどうすればよいか?

かと言って、単にCCD画像から得られた生カウント数をそのまま代入したのでは、大気外の値になっていないので、間違いである。(その夜の大気減光係数がわかっていれば、大気外の生カウント数に直せるが、多くの場合、大気減光係数は不明であろう)

ではどうするか。 比較星には_cを、目的の星には_vの添字を付けて星の違いを区別すると、 それぞれの星について、2組の変換式が書ける。

比較星について、

(B-V)_c = 1.112(b-v)_0c - 0.246   (1)_c
V_c = v_0c - 0.0542(B-V)_c - 8.6013   (2)_c

目的の星について

(B-V)_v = 1.112(b-v)_0v - 0.246   (1)_v
V_v = v_0v - 0.0542(B-V)_v - 8.6013  (2)_v

相対測光なので2つの星について差を取ると、(定数項が消え、共通係数でくくれる)

(1)_v-(1)_c:
(B-V)_v-(B-V)_c =1.112(b-v)_0v - 0.246 - (1.112(b-v)_0c - 0.246)
                =1.112(b-v)_0v - (1.112(b-v)_0c)
                =1.112((b-v)_0v -( b-v)_0c)            (3)式
    (B-V)     =1.112  *  (b-v)_0
(2)_v-(2)_c:
V_v-V_c = v_0v - 0.0542(B-V)_v - 8.6013 - (v_0c-0.0542(B-V)_c-8.6013)
        = v_0v - v_0c - 0.0542((B-V)_v - (B-V)_c)     (4)式
   V  =    v_0    -0.0542 *    (B-V)

ここで、やむを得ず次のような近似を行う(2次の大気減光係数がわかっていれば、近似せずに済むが、わからない場合は仕方がない)。

(3)式の (b-v)_0v - (b-v)_0c は大気外の値どうしの引き算であるが、比較星と目的星が接近している場合は、大気の影響はそれほど大きくなくなるので、大気内の値のままの引き算、(b-v)_v - (b-v)_cとそれほど大きくは違わないはずなので、置き換える。 同様に、(4)式の v_0v - v_0cも、v_v - v_cで置き換える。

(B-V)_v - (B-V)_c = 1.112((b-v)_v - (b-v)_c)      (3)’式
V_v - V_c = v_v - v_c - 0.0542((B-V)_v -( B-V)_c)     (4)’式

この (3)’(4)’式を用いれば近似的に変換できる ことになる。ここで、

(b-v)_v = -2.5*log(目的星の生のBカウント数/目的星の生のVカウン ト数)
(b-v)_c = -2.5*log(比較星の生のBカウント数/比較星の生のVカウン ト数)
v_v = -2.5*log(目的星の生のカウント数)
v_c = -2.5*log(比較星の生のカウント数)

である。しかし、使用した測光ソフトでは生カウントが不明であり、上の例のようにいきなり比較星との等級差b,vだけが出てくるなら、次のように考えれば、b,vそのままで使える。

b = (b_v - b_c)
v =(v_v - v_c)

なので (3)'式の(b-v)_v - (b-v)_cの部分がb-v で、(4)'式のv_v - v_cはv置き換えられるから、(3)'(4)'式は

(B-V)_v - (B-V)_c = 1.112(b - v)         (3)"式
V_v - V_c = v - 0.0542((B-V)_v -( B-V)_c)     (4)"式

だと思って使えばよいことになる。

 上の例の値を使えば、b=-2.161、v=-2.062 なので、(3)"式から

(B-V)_v - (B-V)_c = 1.112(-2.161 + 2.062)
                   = -0.110

(4)"式から

V_v - V_c = -2.062 - 0.0542*(-0.110)  
          = -2.056

結局、目的星のVとB-Vは

V_v = V_c - 2.056 = 6.362 - 2.056 =4.306
(B-V)_v = (B-V)_c - 0.110
        = (6.308-6.362)- 0.110 
        = -0.164
B_v =  4.306 -0.164 = 4.142

カタログ値はV=4.300、B=4.100なので、誤差はVで+0.006、Bで+0.042となる。

なお、2次減光系数 k"bv, k"ub がわかっていれば、上記のような近似でなく厳密な計算ができる。2次減光系数は、変化しにくい量なので、一度測ればその値をずっと使い続けられる。ちなみに、k"bvは-0.03のような数字なので、上記の例では誤差はさらに小さくなる。

2次減光系数が既知の場合

例えば、 k"bv=-0.023, k"v=0.004 が得られたとする。上記(3)(4)式がそのまま使える。再掲すると

    (B-V)=   1.112  *  (b-v)_0         (3)
      V  =v_0 - 0.0542 * (B-V)     (4)

目的の星HR3454を airmass X=1.167(南中付近)の所で観測し、比較星との等級差が b = -2.161とv = -2.062 ((b-v)=0.099)であるとすると、大気外等級差v_0と大気外色指数差(b-v)_0は次式で表されるので

(b-v)_0=(b-v) - k"bv*X*(b-v)
v_0=v - k"v*X*(b-v)

(3)(4)式は

(B-V)= -0.110 -(0.099-0.023*1.167*0.099)
       = -0.113
  V  = -2.062-0.004*1.167*0.099 - 0.0542 * (-0.113)
       = -2.062-0.00046+0.0061
       = -2.056

となり、結局 目的星のVとB-Vの値は

V_v = V_c - 2.056 = 6.362 - 2.056 =4.306
(B-V)_v = (B-V)_c - 0.113
        = (6.308-6.362)- 0.113 
        = -0.168
B_v =  4.306 -0.168 = 4.138

カタログ値はV=4.300、B=4.100なので、誤差はVで+0.006、Bで+0.038となる。 2次減光系数k"bvを考慮しなかった場合と比べて、Vは変わらず、Bで0.004だけ良くなった。

この場合の結論として、2次減光係数のうちk"vは余りに小さすぎて事実上影響がないので無視して良い。k"bvは少数第3位に影響する程度(1%にみたない影響)と言えそうである。

 ただし、k"bvはairmass Xに比例して効くので、長時間の変光星の相対測光観測のように、高度が低い所まで観測する場合は、確実に影響は増大する。 k"bvは、かつてのピナツボ火山の噴火(1991年)のような場合(派手な夕焼けが長期間続き、冷夏となり世界中の農作物生産に影響、皆既月食中は月が全く見えなくなった)は変化するが、それ以外では使い回しができる安定した値である。


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Last modified:2022/04/06 16:53:29
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