OTO - Ohshima Tamashima Observatory- - damage2eye Diff
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!日食観察の安全性議論のための資料
(2009年5月13日) 大島 修
目的:日食観察用のフィルターの安全性を議論するための基礎資料を提示する
!!議論の前提
フィルターの危険性を科学的に論じるためには
波長による危険の程度をD(λ)で表すとすると、
光源の分光特性を S(λ)、
地球大気の透過特性を A(λ)、
フィルターの透過特性を F(λ)、
眼の障害感受性を Or(λ)、とすると
D(λ)= S(λ)*A(λ)*F(λ)*Or(λ) (1)
であるはずなので、
議論の根拠として、これら4つのデータを示す必要があると思います。
さまざまなフィルターの透過特性F(λ)を除いた残りの3要素の積は、共通なので
ここでは、先に
S(λ)*A(λ)*Or(λ)
を概算することを試みる。
!!眼の波長による障害感受性Or(λ)について
私はこの分野に不案内なので、この種の資料を持ち合わせていません。
しかし、それでは議論にならないので、値を仮定することにします。
無理のない仮定として、第1近似として、眼が受けるダメージは、光子の持つエネルギー(E = hν)に比例するとします。(この仮定が正しいかどうか、実験で確かめる必要があります。ただ、そう頓珍漢な仮定ではないと思います。)
すなわち、単位波長あたりのエネルギーに変換すると、
Or(λ)〜 E(λ) = hν|dν/dλ| (2)
波長0.5μmにおける1Åあたりのエネルギーを1とし、各波長にあける相対的なエネルギーを求める。
まず、光の波長、振動数、光速度の関係から
ν=C/λ (3)
これを微分して
dν/dλ = -C/λ^2 (4)
単位波長あたりのエネルギーに変換するため、(2)式に(3)と(4)式を代入して
Or(λ)〜 E(λ) = hC^2/λ^3 (5)
0.5μmにおけるOr(λ)〜E(λ)を1とすると、各波長λにあける相対的なエネルギーは、
Or(λ)/Or(λ=0.5) = (0.5/λ)^3 (6)
となり、波長の3乗に反比例する。次節のグラフの緑線のように、紫外線部の光子は非常に大きなエネルギーを持っていることがわかる(皮膚がんの原因)。逆に、赤外部では、非常に低い値となる。
!! S(λ)*A(λ)*Or(λ)を計算する
光源の分光特性(=太陽のスペクトル分布)S(λ)、地球大気の透過特性A(λ)を、
A.N.Cox ed, 2000, "Allen's AstrophysicalQuantities 4th ed."
から採り、前節の(6)式 Or(λ)/Or(λ=0.5)と掛け合わせると,
次のグラフの青線のようになり、近赤外部の値は非常に低いことがわかる。
F(λ)という特性を持つフィルターの、眼へのダメージはダメージを考える場合は、この青線の値に
フィルターの各波長での値を掛けなければならない。
[[http://otobs.org/tech/damage2eye.gif]]
数値表
[[http://otobs.org/tech/damage2eye_table.gif]]
Excelファイルが必要な人は[[ここにあります|http://otobs.org/tech/Damage2eye.xls]]
!!結論
フィルターとしては、近赤外部の透過特性が、可視域に比べて極端に良いもの(例えば、ネガカラーの感光部など)以外は、眼へのダメージはそれほど心配しなくて良さそうである。
ただし、より正確な議論を行うためには、仮定ではなく、実際の眼の障害感受性 Or(λ)を知る必要がある。
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(2009年5月13日) 大島 修
目的:日食観察用のフィルターの安全性を議論するための基礎資料を提示する
!!議論の前提
フィルターの危険性を科学的に論じるためには
波長による危険の程度をD(λ)で表すとすると、
光源の分光特性を S(λ)、
地球大気の透過特性を A(λ)、
フィルターの透過特性を F(λ)、
眼の障害感受性を Or(λ)、とすると
D(λ)= S(λ)*A(λ)*F(λ)*Or(λ) (1)
であるはずなので、
議論の根拠として、これら4つのデータを示す必要があると思います。
さまざまなフィルターの透過特性F(λ)を除いた残りの3要素の積は、共通なので
ここでは、先に
S(λ)*A(λ)*Or(λ)
を概算することを試みる。
!!眼の波長による障害感受性Or(λ)について
私はこの分野に不案内なので、この種の資料を持ち合わせていません。
しかし、それでは議論にならないので、値を仮定することにします。
無理のない仮定として、第1近似として、眼が受けるダメージは、光子の持つエネルギー(E = hν)に比例するとします。(この仮定が正しいかどうか、実験で確かめる必要があります。ただ、そう頓珍漢な仮定ではないと思います。)
すなわち、単位波長あたりのエネルギーに変換すると、
Or(λ)〜 E(λ) = hν|dν/dλ| (2)
波長0.5μmにおける1Åあたりのエネルギーを1とし、各波長にあける相対的なエネルギーを求める。
まず、光の波長、振動数、光速度の関係から
ν=C/λ (3)
これを微分して
dν/dλ = -C/λ^2 (4)
単位波長あたりのエネルギーに変換するため、(2)式に(3)と(4)式を代入して
Or(λ)〜 E(λ) = hC^2/λ^3 (5)
0.5μmにおけるOr(λ)〜E(λ)を1とすると、各波長λにあける相対的なエネルギーは、
Or(λ)/Or(λ=0.5) = (0.5/λ)^3 (6)
となり、波長の3乗に反比例する。次節のグラフの緑線のように、紫外線部の光子は非常に大きなエネルギーを持っていることがわかる(皮膚がんの原因)。逆に、赤外部では、非常に低い値となる。
!! S(λ)*A(λ)*Or(λ)を計算する
光源の分光特性(=太陽のスペクトル分布)S(λ)、地球大気の透過特性A(λ)を、
A.N.Cox ed, 2000, "Allen's AstrophysicalQuantities 4th ed."
から採り、前節の(6)式 Or(λ)/Or(λ=0.5)と掛け合わせると,
次のグラフの青線のようになり、近赤外部の値は非常に低いことがわかる。
F(λ)という特性を持つフィルターの、眼への
[[http://otobs.org/tech/damage2eye.gif]]
数値表
[[http://otobs.org/tech/damage2eye_table.gif]]
Excelファイルが必要な人は[[ここにあります|http://otobs.org/tech/Damage2eye.xls]]
!!結論
フィルターとしては、近赤外部の透過特性が、可視域に比べて極端に良いもの(例えば、ネガカラーの感光部など)以外は、眼へのダメージはそれほど心配しなくて良さそうである。
ただし、より正確な議論を行うためには、仮定ではなく、実際の眼の障害感受性 Or(λ)を知る必要がある。
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