OTO - Ohshima Tamashima Observatory- - dynamic_range Diff
- Added parts are displayed like this.
- Deleted parts are displayed
like this.
前章の議論では、CCDで検出する光子数が多いほど測光精度が上がるという話
になった。しかし、実際の観測にあたっては、一方で、CCDカメラの特性として
1ピクセルあたりのカウント数には上限も存在する
ことを考慮しなければならない。
冷却CCDカメラでは、カウント数の大きい方で直線性が悪化することが知られて
いる。直線性とは、CCDに入力する光量と、その場合の出力であるカ ウント数の間
の比例関係のことで、直線性が保たれている範囲では、光子統計の許す範囲内
で測定の正確さが保証される。
この直線性が保たれる上限と、ダークノイズや読出しなどのために測定が不正確
になる下限の間の範囲のことをダイナミックレンジと呼ぶ。
ダイナミックレンジは広いほど、より明るい星からより暗い星までを同一フレーム
上で測光できるので好都合である。
明るい方で直線性が悪化する原因は、
(1)1ピクセルに収容できる電子数が有限であること
(2)CCDチップによってはABG(アンチブルーミングゲート)機能を持つものがあり、ある程度以上溜まった電子を自動的にピクセルから捨てる場合がある
こと、などによる。従って、測光が目的で購入する場合はABG付きのCCDは避けた方がよい。
しかし、すでに購入済みの場合は、ダイナミックレンジの範囲で、以下の注意を守って使えば利用できる。
!!ダイナミックレンジの判断方法
横軸に入射光量(代わりに露出時間)をとり、縦軸に1ピクセルあたりのカウント数
(1%の精度を確保するためには10000ピクセル以上の平均値)をとったグラフを描
いた場合、カウント数の限界(16ビットAD変換の場合は、2の16乗で65536に近づく
につれ、直線からはずれてグラフが寝てくる。
下図は、ST-9XE(ABGなし)と旧型ST-7(ABGあり)の場合を4.1 章で述べる方法
で測定した実例を示す。
ST-9XEは、ほぼ16ビットの上限(65535カウント)近くまで直線性が保たれているが、
AGB付きのST-7では、ビンニングをビニングを行わない場合、20000カウント以上で直線性が
あやしくなっており、これより明るい領域で測光してはならないということがわかる。
しかし、ビンニングをビニングを行えば、16ビットの上限付近まで直線性は保たれることもわかる。
なお、露出時間が1秒以下では直線性が微妙に悪化していることがわかる。その原
因は、実験に使った光源が60Hz周期で変動する蛍光灯であることやシャッター速度の
ムラに起因するものと思われる。
[[http://otobs.org/photometry/linearity.gif]]
!!このページでの結論
測光精度を上げるためには、
1ピクセルあたりのカウント数が直線から外れない最大のカウント数を
上限とすればよい。
その上限のカウント数をN_maxとすると、観測したい星の1ピクセルあたりのカウント数Xは
X < N_max
でなければならない。
一方、光子統計の議論から、その星のカウント数は大きければ大きいほどよいから、
ピントをはずし星像を大きくすることにより、多くのピクセルで分散して光を受けられる
ので、その星のトータルのカウント数を増やすことができる。
できれば、1ピクセルあたりのカウント数Xが
10000 < X < N_max
となるようにするのがよいだろう。
N_maxの値は、20000から40000の間の場合が多いようであるが、CCDにより異なるので自分
で調べる必要がある。
!!<参考例>
直線性が保証されるカウント数N_maxの目安(2004.3.12/13)実験(上図グラフ参照)
<<<
・ST-7(旧型 パラレルポート読出し ABG付き、KAF-0400チップ)
ビンニングビニング無しでは 20000カウント程度まで
2x2ビンニングビニング時では 50000カウント程度まで
3x3ビンニングビニング時では 50000カウント程度まで
・ST-9EX(USB読出し ABG無し KAF-0261Eチップ )
ビンニングビニング無し 50000カウント程度まで
>>>
自分のCCDカメラの直線性と測定の上限を知るために、4.1 章で述べる簡単な
方法で一度は調査しておきたい。詳しくは、4.1 章で述べるが、一定の明るさと思
われる光源を、露出時間を変えて撮像し、1ピクセルあたりのカウント数と露出時
間の関係が比例関係から外れない範囲が、何カウントまでかを調べてみるとよい。
----
[[CCD測光]]トップへ戻る
[[OTO-Ohshima Tamashima Observatory-]]トップへ戻る
{{counter}}
になった。しかし、実際の観測にあたっては、一方で、CCDカメラの特性として
1ピクセルあたりのカウント数には上限も存在する
ことを考慮しなければならない。
冷却CCDカメラでは、カウント数の大きい方で直線性が悪化することが知られて
いる。直線性とは、CCDに入力する光量と、その場合の出力であるカ ウント数の間
の比例関係のことで、直線性が保たれている範囲では、光子統計の許す範囲内
で測定の正確さが保証される。
この直線性が保たれる上限と、ダークノイズや読出しなどのために測定が不正確
になる下限の間の範囲のことをダイナミックレンジと呼ぶ。
ダイナミックレンジは広いほど、より明るい星からより暗い星までを同一フレーム
上で測光できるので好都合である。
明るい方で直線性が悪化する原因は、
(1)1ピクセルに収容できる電子数が有限であること
(2)CCDチップによってはABG(アンチブルーミングゲート)機能を持つものがあり、ある程度以上溜まった電子を自動的にピクセルから捨てる場合がある
こと、などによる。従って、測光が目的で購入する場合はABG付きのCCDは避けた方がよい。
しかし、すでに購入済みの場合は、ダイナミックレンジの範囲で、以下の注意を守って使えば利用できる。
!!ダイナミックレンジの判断方法
横軸に入射光量(代わりに露出時間)をとり、縦軸に1ピクセルあたりのカウント数
(1%の精度を確保するためには10000ピクセル以上の平均値)をとったグラフを描
いた場合、カウント数の限界(16ビットAD変換の場合は、2の16乗で65536に近づく
につれ、直線からはずれてグラフが寝てくる。
下図は、ST-9XE(ABGなし)と旧型ST-7(ABGあり)の場合を4.1 章で述べる方法
で測定した実例を示す。
ST-9XEは、ほぼ16ビットの上限(65535カウント)近くまで直線性が保たれているが、
AGB付きのST-7では、
あやしくなっており、これより明るい領域で測光してはならないということがわかる。
しかし、
なお、露出時間が1秒以下では直線性が微妙に悪化していることがわかる。その原
因は、実験に使った光源が60Hz周期で変動する蛍光灯であることやシャッター速度の
ムラに起因するものと思われる。
[[http://otobs.org/photometry/linearity.gif]]
!!このページでの結論
測光精度を上げるためには、
1ピクセルあたりのカウント数が直線から外れない最大のカウント数を
上限とすればよい。
その上限のカウント数をN_maxとすると、観測したい星の1ピクセルあたりのカウント数Xは
X < N_max
でなければならない。
一方、光子統計の議論から、その星のカウント数は大きければ大きいほどよいから、
ピントをはずし星像を大きくすることにより、多くのピクセルで分散して光を受けられる
ので、その星のトータルのカウント数を増やすことができる。
できれば、1ピクセルあたりのカウント数Xが
10000 < X < N_max
となるようにするのがよいだろう。
N_maxの値は、20000から40000の間の場合が多いようであるが、CCDにより異なるので自分
で調べる必要がある。
!!<参考例>
直線性が保証されるカウント数N_maxの目安(2004.3.12/13)実験(上図グラフ参照)
<<<
・ST-7(旧型 パラレルポート読出し ABG付き、KAF-0400チップ)
2x2
3x3
・ST-9EX(USB読出し ABG無し KAF-0261Eチップ )
>>>
自分のCCDカメラの直線性と測定の上限を知るために、4.1 章で述べる簡単な
方法で一度は調査しておきたい。詳しくは、4.1 章で述べるが、一定の明るさと思
われる光源を、露出時間を変えて撮像し、1ピクセルあたりのカウント数と露出時
間の関係が比例関係から外れない範囲が、何カウントまでかを調べてみるとよい。
----
[[CCD測光]]トップへ戻る
[[OTO-Ohshima Tamashima Observatory-]]トップへ戻る
{{counter}}