フィルターによる焦点の違い
フィルターによる焦点の違い
ST-9CCDカメラに100mmF/2レンズを取り付けるアダプター製作にあたって、色収差が問題になるはずだったので、無限遠がレンズの無限遠の指標と一致するようにはせず、無限遠がレンズの距離指標で7mあたりになるようにした。
12月4日に実際の星像を撮像し、各フィルターごとの焦点位置を決定した。テストはすべて絞りをF/2.8に絞った状態で行った。
焦点位置決定にあたっては、通常は、得られた星像直径(例えば半値全幅FWHM)とレンズの位置の関係を見ればよい。しかし、今回入手したOptec Inc.製のHαとHβフィルターにも非点収差が見られたので、この2種のフィルタ-では円形でない星像の「直径」が定義できない。 そこで、面積とレンズ位置の関係を調べることにした。 面積として、円形星像の場合(RとV)では、半値全幅FWHMの2乗を用いた。 HαとHβの星像では、歪んだ星像の長軸方向のFWHMと短軸方向のFWHMの積を用いることにした。
FWHMの測定には、すばる画像処理ソフト「マカリ」のグラフ機能を用い、星像ピーク値の半値にあたる場所のピクセル座標を読み取りFWHMの値を得た。
the best foci filter focal index at the best focus Rband 7.0m Hα 6.0m Vband 7.2m Hβ 9.2m
ベストフォーカスの決定 (縦軸はすべてカウント数)
実際の星像
次に、レンズの焦点を、RとVでの焦点位置(=レンズの距離指標「7m」)で固定した場合の 4色の星像を示す。(拡大画像)
R-band
V-band
H-alpher
H-beta
次は、 HαとHβのよりましな焦点位置での画像を示す。
H-alpher @6.0m
H-beta @10.0m
結論
この100mmレンズの色収差を調べた結果、4つのフィルターを使用した場合ベストフォーカス 位置は、上記の表のように3種類あることがわかった。また干渉フィルターの非点収差もあるので、使用に当たっては、レンズのフォーカスはベストの位置で使用しなければならない。 すなわち、フィルターに合わせて自動で合焦する機構が必要になる。
またベストフォーカスで使用した場合は、上に示した画像のように星像は1ピクセル内に収まって しまう場合があるので、CCDのピクセルサイズは完全にアンダーサンプリングとなる。 この問題を解決するためには、あえてレンズの前に焦点像を悪化させるための「メガネ」を置き、 焦点像の直径方向が3ピクセル程度になるようにして使う必要がある。 「メガネ」としては、透明なアクリル板を使うことを考えている。思い通りにうまく行くかどうかは実験によって確かめたい。
さらなる考察
フィルターごとに合焦を行うと、色収差による焦点距離の違いから、CCDの同一ピクセルが、天球上の異なる位置を与えることになる。つまり、色に関係する測光にあたっては単純にフレームごとの演算が行えないことになる。それがどの程度の影響がでるかを以下に見積もった。
(1)色による焦点位置の差(レンズの公式 1/a+1/b=1/fによる)
H-alpherでの合焦位置 b=6mのとき a=(100*6000)/(6000-100)=101.695 H-betaでの合焦位置 b=9.2mのとき a=(100*9200)/(9200-100)=101.099
焦点位置の差 101.695-101.099=0.596
焦点位置の違い0.60mmに対応するピンぼけの直径(F/2.8の場合) 0.60/2.8=0.214 それに対応するピクセル数 0.214/0.02=10.7 レンズのフォーカスを固定すると、一方は11ピクセル分ボケる。 これでは、ボケすぎである。
f/2.8の光束のとき1ピクセル0.020mmに対応する光軸方向の距離は 0.02*2.8=0.056mm
CCDチップのコーナー(中心からの距離0.020*256*1.414=7.24mm)にあたるピクセルでは、この焦点距離の違いは
画角として
- H-alpher
- 7.24/101.68*180/3.1415=4.0798 deg
- H-beta
- 7.24/101.089*180/3.1415=4.1036 deg
その差は4.1036-4.0798=0.0238deg つまり
0.0238*3600=85.68 arcsecとなる
つまり、フィルターごとに色収差による合焦を行うと 同一ピクセルが、最大1.5分角程度の位置の違いになり、 異なるフィルター間で演算する場合は、個々の天体を検出するか、 スケールを合わせた上で、演算を行う必要がある。
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