極軸のずれの現れ方
極軸が天の北極からずれていると、観測時にどのような現れ方をするかを考える。
極軸がすれていると、赤緯方向の修正が必要になることは良く知られているが、追尾速度が速くなったり遅くなったりする、つまり赤経方向にも影響が出ることはあまり認識されていないようで、望遠鏡の出来が悪いせいにされたりすることがあるが、実は極軸合わせを最後まで追い込んでいないために、そう見えているだけなのかも知れない。 以下の議論は定性的な理解のために、簡単に平面で考えているが、正確な定量的な議論のためには球面三角で考える必要がある。
極軸が下向きになっている(高度が不足している)場合
まず、下の図のように、極軸の高度が不足している場合を考える。(この場合を理解すると、他の場合もすぐ応用が利くようになる)
今、星が点Aにあるとする。つまり、北西の空で北極星より高い位置(数学の座標では第2象限)にあるとする。図で実線の円は、星の日周運動を表している。点Aで交わっている破線の円は、望遠鏡が極軸の周りを回る動きを示している。
赤緯方向の影響
図からわかるように、時間が経つと望遠鏡は極軸の周りを反時計方向に回るので、星の日周運動よりもより外側へ動いていく。望遠鏡の視野内を見ていると、逆に星の方が天の北極の方へ逃げて行くように見える。CCDカメラでこの星を連続撮像していくと、日周運動の動き(=観測時間t分)に対して、赤緯方向のずれ(d秒角)が測定できる。図中の星のずれの角度(赤色)は、極軸のずれの角度に1/sin(時角)をかけたものに等しい。
例で考えると、時角4時にある星が20分間で北に30秒角ずれたとする。
極軸のずれΘ= arcTan(30/(60*60*15*20/60))/sin(60deg) = .0955deg/0.866 = 0.110度 = 6.6 分角
星が点A’にある時(子午線通過より前)には、星は時間と共に外側へ逃げる、つまり南へずれるように見える。
赤経方向(追尾速度)への影響
次に、この極軸のずれが追尾速度に及ぼす影響を考える。 下の図は、簡単のために、星が子午線通を過している時を考える。 2つの円の半径が異なるので、星も望遠鏡も同じ角速度(1時間に約15度)としても望遠鏡の方が半径が大きい(=極軸のずれの分だけ赤緯が低い値)になるので、実際の動きは、望遠鏡の方が速い、つまり星は遅れることになる。
この半径が異なるために、追尾速度に影響を与える効果は、星の場所により異なる。上の図で星が点Aにある時は、望遠鏡動きの円の半径の方が、日周運動の半径より大きく、星は遅れる。しかし、点Bにある時は、望遠鏡動きの円の半径の方が、日周運動の半径より小さく、星は進むように見える。「極軸のずれ」の2等分線をはさんで、追尾速度への効果が逆になることがわかる。
厳密な計算法 行列表現
極軸のズレを座標の回転で表す
極軸のズレを表現するために次のように考えることにする。
赤道座標
x軸:子午線上の天の赤道方向(=時角0) y軸:時角-6時(=地平座標の真東) z軸:天の北極
地平座標(極軸の方位角方向のズレを表す)
赤道座標のy軸を中心に x'軸:
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